<Go to トラベル>

 

感染拡大防止と社会経済活動活性化の両立は可能か?

観光産業の未来を考える。


 

新型コロナウィルス問題をウェディングケーキ図で考えると、ウィルスは私たちの社会や経済活動の外から襲来した存在ですから、この図のように環境のさらに下層から社会と経済に直撃した想定外の外敵となります。

 


 

この緊急事態に対応して政府が掲げたのが「感染拡大防止と社会経済活動を両立させる」という極めて困難な目標で、特に深刻な被害を受けた観光・旅行産業の復興を目的に立ち上がったのが「GO TO トラベル キャンペーン」です。

 


 

では感染拡大防止社会経済活動の2目標をウェディングケーキ図の横軸においてみましょう。生命を守る医療対策としての国民に呼びかけられているソーシャルディスタンス確保3密回避、これに対して移動制限により我慢を強いられた余暇活動とそれを支える観光業界の支援。この両立が困難であることは、双方のバランスを天秤のような図式で見ると明らかです。


 

双方の数的変化を赤信号と青信号で図式化してみました。まず感染者数の拡大によって経済活動が自粛となった結果、移動(旅行)者は当然のことながら減少します【赤矢印】。自粛の効果が出て感染者数が減少すると制限を緩めて移動(旅行)者を増やしていく【青矢印】という文脈の中でGO TO トラベルのようなキャンペーンは一定の効果を持つと考えられます。

問題は自然災害のように右肩上がりの復興シナリオが想定できる場合、つまり同様のリスクが当面は起こらない前提があれば対策としてのキャンペーンにある程度の効果が見込めますが、コロナ禍はウィルスの驚異そのものがなくならない限り緩和による移動(旅行)者の増加が次なる感染者増に直結してしまうリスクがあることです。
GO TO トラベルキャンペーンの開始に際して感染者数が多かった東京都が対象外となったのは、まさにこの流れと言えます。

 

感染症がなくなるか、ウィルスに対応するワクチンが完備されない間は残念ながらこの天秤が不安定に揺れ続けることになるため、観光消費のキャンペーンには供給側の「売りたい」という願望が先行し、対する需要側の国民には「買いたい」という欲求と並行して「買っていいのだろうか?」という牽制心が働いてしまいます。

「感染拡大防止と社会経済活動の両立は可能か?」という問いかけに対する回答は「自動車のアクセルとブレーキのような関係の2要素は両立よりもバランスの観点で対策を講じるべき」ではないでしょうか?


 

一方で持続可能な開発を目指すSDGsにおいてもうひとつの注視すべきバランスがあります。コロナ禍で観光産業がストップした世界各地からは「海の透明度があがった」「草花の色が鮮やかになった」「大気汚染が緩和された」といったポジティブなニュースが目立っていることです。

ウェディングケーキ図の3要素を「経済・社会」と「環境」という文明と自然の対立構図で見直した時、モノ言わぬ自然界にとってはコロナ禍がプラスに働いていると見ることもできるのです。コロナ禍以前の段階で観光地が耐えられる以上の観光客が押し寄せるオーバーツーリズムの問題が大きくなっていましたが、この機会に経済優先の競争論理による観光産業ではなく、自然界とのバランスに配慮した共創論理によるアンダーツーリズムの分野の台頭が望まれます。コロナ禍の試練を「量から質」の観光産業への変容に活かすことで持続可能な観光は可能なはずです。

SDGsのターゲットには以下の箇所に観光業が記されて居ます。

 

【8:働きがいも経済成長も】

 

●8.9:2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。

 

【12:つくる責任つかう責任】

 

●12.b:雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。

 

コロナ禍を乗り越えた先に観光産業が担うべき役割は2015年の段階で既にSDGsに内包されていたのではないでしょうか?