<環境汚染事故>

 

被害者は誰?加害者は誰?

繰り返される事故を避けるために何をすればよいのか。


 

今年7月25日にインド洋の島国モーリシャス沖で起きた日本貨物船の座礁事故は深刻な国際問題ですが、新型コロナウィルス問題のニュースに隠されて私たちに届く情報は限られています。同国政府は環境緊急事態宣言を出して世界各国に助けを求めています。直近の情報でウィルス感染者が362名しかいない人口126万人の小国にとっては、おそらく環境汚染問題の方がはるかに深刻な問題です。


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この問題をSDGs思考で分析するために、SDGsウェディングケーキ図に「共創」と「競争」を対極においた横軸をおいてみます。

 

 


 

では、ここに共創と競争で連想されるキーワードを経済・社会・環境の3階層の横に記してみましょう。底辺の環境を見ると動植物の生命間に弱肉強食食物連鎖という厳しい上下の競争を見ることができますが。熱帯雨林やサンゴ礁など多様な生命有機的につながっている共創空間の方がより強いイメージとしてあるのではないでしょうか?自然界には強者と弱者の存在はあれど長い時間の尺度で見れば概ね数のバランスが取れてきたといえます。

ところが人類の文明がここ数世紀で一気に加速したことで様々なバランスが崩れたと思いませんか?経済界とは日々のビジネスや商行動を通じて利益を上げることであり、企業間でライバルに勝つことが組織目的になっています。そして、この共創が国境を越えたモデルが貿易戦争となります。さらに競争は常に勝者と敗者を生み出しますからそこに格差が生まれます。この社会的課題解決を目的に勃発するのが軍事的な衝突であり、民族や宗教の対立も含めて人類史上争いが絶えたことはありません。

 

そして、これらの国家的対立の解消を目指すべく生まれたのが国連をはじめとするグローバル組織であり、SDGsもその延長線上に生まれました。

 

 


 

次にSDGsウェディングケーキ図の横軸を加害者被害者の対極に置き換えてみます。今回の事件を原因から結果に至る流れでまとめると以下のようになります。
 ●文明社会に必要な重油という資源を積んだ貨物船
 ●海路でグローバルに移動するため美しい島国にも近づく
 ●水深の浅いサンゴ礁に近づいたため座礁
 ●漏れた重油が湿地帯に流れ込む
 ●そこに暮らす野生生物群の命をうばい
 ●漁業従事者の仕事を生活を奪う
 ●美しい自然を売りとする観光産業も打撃を受ける
 ●これらの産業に頼る国家は財政難

 ●多くの失業者が生まれ復活には時間がかかる

 

いかがでしょう、まさにここには負の連鎖が生まれています。

 


 

 

残念ながら1989年のアラスカや1997年の日本海など、貨物船の座礁による重油の流出事故はこれまでにも大きなものがあり被害者の復興には時間がかかりました。今回の事故は過去の事例と比べて流出量が少なかったそうですが、漁業や観光業が大きな比率を占める小国に与える影響には大きなものがあります。

 

では、再発防止策とは?そこをSDGs思考で考えてみましょう。
まず着目したいのが【7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに】内の以下のターゲットです。


7.a:2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い 化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。

 

 
脱炭素社会を目指すSDGsにおいて化石燃料の国際流通が前提となる重油の取り扱いにはメスを入れていく必要があります。【9:産業と技術革新の基盤をつくろう】のターゲットには

 

9.a:アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。

 

とあるようにモーリシャスのような島国へは新たなテクノロジーや技術支援が求められていますから、先進国は貨物船というリスクを運ぶ通過点としてではなく豊かな自然を学ぶ観光の目的地として関係性を深めるねきなのです。

その結果として【14:海の豊かさを守ろう】モーリシャスのような国が目指す未来像は以下のターゲットに明示されてるのです。

 

14.7:2030 年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発 途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。

 

エネルギーの地産地消という考え方が注目されています。遠い産油国から石油を輸入し重油に加工して貿易を行う…という世界を舞台とするダイナミックな経済モデルが20世紀に発展をもたらしたことに間違いはありません。これに対して太陽光や風力発電は世界のどこでも地元生産が可能なモデルですし、バイオマスや地熱発電など他の再生可能エネルギーも含めて分散化できるので、今回のような他国に迷惑を及ぼす事故は起きません。また、域外に流れていたエネルギーコストを地元で循環させることができれば雇用を増やすことも可能ですから、豊かな社会づくりにとって善循環が生まれるはずです。